上肢(腕や手)の神経は脊髄から枝分かれして首の部分で鎖骨下動脈、鎖骨下静脈と合流し、鎖骨と第1肋骨の間を通過する。
その周辺で神経と血管が圧迫を受けたり、引っ張られたりすることで起こる病気。
主な症状は腕のしびれや痛みで、神経の圧迫で症状が出る場合もあれば、血行の悪化で上肢全体がしびれることもある。
なで肩の女性に多いと言われ、重い物を運ぶ労働者にも発症する。
「頸肋」という、通常は存在しない余分な肋骨が第7頚椎から突出し、神経を圧迫している人もいる。
鎖骨の上の首の付け根部分を圧迫するなどして症状が出るかテストを行うほか、X線検査で頸肋の有無を確認したり、CT検査で血管の走行を確認したりする。
症状が軽い場合には肩甲帯周囲の筋力強化やストレッチなどのリハビリテーションをする。
症状緩和のための消炎鎮痛剤、ビタミン剤などの内服やブロック注射をすることもある。それでも改善しない場合には手術を検討する。
頚肋がある場合にはそれを切除する。
鎖骨と第1肋骨の間隙での圧迫が疑われる場合には、神経血管の圧迫に関係する筋腱の切離や第1肋骨を切除する。
日常生活の注意点は、つり革につかまるなど腕を上げる動作や重い物を持つ運動や労働を避ける。
参考・一部引用
朝日新聞・朝刊 2020.10.21
]]>メタボリック症候群を診断する特定健康診査(メタボ健診)について、新潟大のチームは10日までに、ビッグデータを解析して、心血管疾患の高リスク者を高精度に検出できる診断基準の修正案を発表した。
現行では近い将来心血管疾患を発症する女性の9割、男性の7割が見逃されていた。
案では男女とも5割超の予測が可能になるという。
メタボ健診は40〜74歳が対象。
腹囲が男性85cm、女性90cm以上で、血圧、血糖、脂質のうち、2つ以上基準値を超える人をメタボと診断する。
チームは2008〜16年に健診を受けた18〜74歳の約56万人の医療ビッグデータを分析。約5年間、虚血性心疾患や脳卒中の発症の有無を追跡し、将未発症する人を見分けるのに最適な基準値を算出した。
案では、収縮期血圧(最高血圧)が男性130以上、女性120以上とし、空腹時血糖は男性100以上、女性90以上とするなど男女別に現行より厳しく設定。
適用すると5年以内の発症者を検出する「感度」が男性は31%から56%、女性は9%から55%に上昇した。
現在必須とされている腹囲を考慮しなくても、予測能力はほぼ同じだった。
研究チームの代表は「腹囲だけに注目せず、軽症でも複数のリスク因子の組み合わせが心血管疾患を引き起こすという基本の再認識が重要だ」と話した。
(日経新聞・朝刊 2024.3.11)
コメント;
この研究は、メタボ健診における、メタボの必須でありかつ必要条件である「腹囲」という項目を除外したことに注目すべきです。
つまり、肥満というメタボの概念を取り除き「厳しい血圧基準」と「厳しい血糖基準」を設定したことに特徴(目新しさ)があります。
端的にいえば「メタボ」の概念を取り除いたことになります。
ここで気になるのは、血圧、空腹時血糖の許容数値に男女差を設け、かつ女性に厳しい正常値を定めたことです。
従来、この二つ(血圧、空腹時血糖)の数値の正常値に男女差をつけることは一般的ではありません。
あえて男女差を設(もう)けるとするなら、普通の考えでは、男性に厳しく女性には甘い正常値とするのではないでしょうか。
「男女差なし」、「女性に甘い基準」、「女性に厳しい基準」での検討はされているのでしょうか。
そのあたりが気になりました。
]]>名古屋大学の大屋愛実助教と中村和弘教授らは、加齢に伴って太りやすくなる「中年太り」の仕組みをラットの実験で解明したと発表した。
脳の視床下部にある神経細胞の構造が変化し、餌を食べる量の増加などにつながっていた。
ヒトでも中年太りの原因になっているとみて研究を進める。
・研究チームはラットも「中年」に相当する生後6カ月になると、生後9週の「若い」ときより体内の脂肪が燃えにくくなり、太りやすくなることを発見した。
代謝や摂食を調節する脳の視床下部を調べ、一部の神経細胞で「一次繊毛」という構造が加齢に伴って短くなることを突き止めた。
一次繊毛は細胞から毛のように伸びているアンテナだ。
・ラットが生まれてから時間がたつにつれ、代謝の促進や摂食の抑制に関わる「メラノコルチン」という物質を受け取る一次繊毛が短くなった。
栄養過多な餌を食べると早く短くなり、餌の量を制限すると遅くなった。
遺伝子操作で視床下部の一次繊毛を強制的に短くすると脂肪が燃えにくくなり、太りやすくなった。
コメント; 「遺伝子操作で視床下部の一次繊毛を強制的に短くする」・・・論文というのは、こういった仮説を実証するするための論理構成と、その手段としての手技が必要となります。「遺伝子操作」という言葉だけで尻込んでしまいます)
・加齢で一次繊毛が短くなる仕組みは不明だが、神経細胞がメラノコルチンに反応しにくくなり、肥満を抑える体の作用が機能しなくなる。
その結果、代謝が下がって餌を食べる量も増え、中年太りにつながると分かった。
一方で、一次繊毛が短くなったラットでも摂食量を制限すると、一次繊毛が再び長くなった。
コメント;
「一次繊毛が再び長くなった」という、アンテナの長さが可逆性であることが実証されたことは福音です。
人間は「欲望のかたまり」です。
できれば、「食欲」というものをコントロールする方法(薬剤でいえばマジンドールなど)と「アンテナの長さ」の関連を実証していただきたいという希望があります。
多分、すでにとりかかってみえるとは思いますが・・・。
また「中年太り」以外の肥満(食欲亢進)では、「アンテナの長さ」はどうなっているのでしょうか。
もし、同様のことが起こっているのなら、「中年太り」特有の現象ではないことになってしまいます。
しかし「摂取量を制限すると、一次繊毛が再び長くなった」ということですから、問題ないんですね。
参考
マジンドール(商品名サノレックス)
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00007131.pdf https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/5631bf165595b3ae0b79672d.html
・中村教授は「肥満の根本原因の一つを解明できた」と話す。
ヒトの脳でも加齢によって神経細胞の一次繊毛が短くなる現象が起こっているとみており、肥満の治療法開発につなげたい考えだ。 「カロリーを摂取しすぎない控えめな食生活を続ければ、一次繊毛が短くなるのを抑え、体の抗肥満作用を維持できるだろう」という。 大阪大学などとの共同研究の成果で、米科学誌「セル・メタボリズム」に掲載された。
コメント;
結局は「カロリーを摂取しすぎない控えめな食生活を続けれる」ことが大事なんですね。
(日経新聞・朝刊 2024.3.8)
]]>急激に症状が進み、致死率が高い「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(Streptococcal Toxic Shock Syndrome, STSS)」について、2023年に報告された患者数が、現在の調査方法となった1999年以降、最多となったことが国立感染症研究所の集計で分かった。
前年と比べ209人多い941人(速報値)に上った。
STSSの原因となる「溶血性レンサ球菌(溶連菌)」は、ありふれた細菌で、子どもの咽頭炎を招くA群溶連菌がよく知られている。
通常は感染しても風邪の症状で済むが、まれにSTSSを発症する。
症状は発熱や手足の痛みなどから始まる。
数十時間で腎不全や呼吸不全などを引き起こし、ショック状態に陥って亡くなることがある。
手足の壊死を伴うことがあるため、「人食いバクテリア」とも呼ばれる。
致死率は菌のタイプで異なるが、3割程度とされる。
(米国の調査では致死率38%)
感染研によると、これまでの患者数の最多は2019年の894人だった。
今年も2月4日時点で、前年同期と比べ155人多い239人に上っている。
飛沫や接触によって感染し、患者は高齢者が多いが、23年後半から50歳未満も増えている。
厚生労働省の担当者は「世界的に患者数は増加傾向だが、理由は分かっていない。手洗いやマスク着用などが予防策となる。体調の急変時はすぐに医療機関を受診してほしい」と話している。
(読売新聞オンライン 2024.2.19)
<追加>
連菌感染症は、咽頭や皮膚に感染するのが普通。
しかし劇症型の場合、血液や筋肉などの通常溶連菌が存在しない部位に感染を起こして、手足の激しい痛みや腫れ、発熱などが出現する。
実際の感染経路は明らかにならない場合が多いが、がんや糖尿病のある方、ステロイドなど免疫を低下させる薬剤を使用している方は発症する危険性が高いとされている。
症状は急速に悪化し、発病後1から2日のうちに血圧低下、チアノーゼ、意識混濁をきたしショックを起こす。
適切な治療を受けないと死亡する、極めて予後不良の感染症。
健常者に発症することが多く「人食いバクテリア」として一時期話題になった。
日本では毎年100〜200人の患者が報告されており、このうち約3割が死亡している。
小児では「水ぼうそう」に罹った後に起きやすくなる。
コメント;
まだSTSSの発症メカニズムは完全にはわかっていない。
一般的には溶連菌により発生する毒(エンテロトキシン)に対しての宿主の過剰な反応の「連鎖」が高い致死率を生み出しているといわれている。
50歳未満を中心とした報告数の増加
https://www.niid.go.jp/niid/ja/group-a-streptococcus-m/group-a-streptococcus-iasrs/12461-528p01.html
]]>新たな研究は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後遺症(ロング・コビッド)の原因が、免疫系の特定の部分の異常にある可能性を示している。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は多くの人にとって、感染者数の急増と減少が繰り返される中で、生活に大混乱を巻き起こしては去っていく病気となっている。
だが数千万人の感染者にとって新型コロナウイルス感染症とは、数カ月または数年続くこともある慢性疾患、場合によっては消耗性疾患の始まりになっている。
新型コロナウイルス感染症の後遺症(ロング・コビッド)を発症する者と、感染して回復する者との違いはどこにあるのか。
新たに発表された論文によると、後遺症の発症者は多くの場合、見過ごされがちな免疫系のある部分が異常に活性化するという。
スイスの研究者チームは、新型コロナウイルス感染症に感染したことがない人、感染して回復した人、後遺症を発症した人たちから採取した血液サンプルのタンパク質濃度を比較した。
科学者チームは、後遺症を発症した人の補体系に関わる一連のタンパク質に変化が見られることを発見した。
補体系は病原菌の破壊や細胞の破片の除去に際して、免疫系を補助する働きを持っている。
こうした補体系の変化が後遺症が続く原因となっていることを証明した研究は、これまでに存在していない。
彼らは新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の陽性となった113人と、一度も感染したことがない39人の血中にある6500以上のタンパク質濃度を調べるところから研究を始めた。
6カ月後、彼らは新たな血液サンプルを採取した。
その時点で73人が感染後に回復し、40人が後遺症を発症していた。
(コメント;感染者のうちの約35%が後遺症に悩んだことになります。これはかなりの高率です。さらに長い期間での観察が必要となります)
後遺症患者の血中で濃度が上昇したタンパク質の多くは、重度の新型コロナウイルス感染症から回復した人の血中でも濃度が上昇した。
だが後遺症患者グループに固有のマーカーは、補体系の異常活性を示した。
補体系は、微生物から体を守るうえで欠かせない役割を担っている。
補体系は、肝臓で生成される30種類以上のタンパク質で構成されており、血中を移動し免疫監視システムとして機能する。
補体系が活性化すると次々に反応が起こり、免疫細胞を感染部位へと集結させ、病原菌を破壊対象に指定し、病原菌に穴を開けて破壊する。
補体系は、通常は抗体の活動を補っている。
しかし補体系が変調をきたすと炎症が広がり、細胞や血管をダメージを与えることになる。
補体系は非常に重要で、免疫系とのやり取りだけでなく、血液凝固系、つまり内皮細胞、血小板、赤血球ともやり取りし、あらゆる器官に入り込む。
このことは、一部の研究者が、感染者の血管内に小さな血栓を発見した理由の説明になるかもしれない。
新型コロナウイルスに感染した後に、補体系が変調をきたす可能性がある理由については明らかになっていない。
このような形で補体が活性化した場合、現在進行形で感染が起きている可能性を示していると考える免疫学者もいる。
つまり、残存ウイルスが、補体系を活性化させ続けている可能性がある。
あるいは、なかなか修復されない細胞の損傷が、補体系を活性化し続けている可能性もある。
もしくは、全く別の原因があるのかもしれない。
現時点での後遺症研究の根本的な問題は、相関関係は数多く明らかになっているものの、証明されている因果関係があまりないことだ。
後遺症の特徴の1つとして補体の異常調節を指摘している論文は、今回発表されたものだけではない。
最新の研究でも、後遺症発症者の補体タンパク質濃度異常が明らかになっている。
この研究グループは、重度の新型コロナウイルス感染症から後遺症の発症まで、患者の経過を追うことはできなかった。
どちらの研究グループも、マーカー自体は異なるものの、後遺症の前兆と見られる一連のマーカーを特定している。
こうしたマーカーが決定的な診断につながるかという点については懐疑的な免疫学者もいる。
補体系の活性化を阻害する治療薬はすでに存在する。
一部の希少遺伝性疾患や自己免疫疾患の治療用に認可されている治療薬だ。
一部の治療法は、重度の新型コロナウイルス感染症患者を対象としてすでに試験を実施しているが、結果はまちまちだ。
だがこれは、研究者が補体の異常調節の兆候を示している患者のみを対象とする術を持たないことが原因になっているかもしれない。
製薬会社が後遺症発症者を対象に治験を始める場合、最も大きな恩恵を受けられそうな者を被験者として選定するという目的で今回のマーカーを利用できるかもしれない。
抗補体薬による治療が、後遺症に対する初めての効果的な治療法になるかもしれない。
だがこうした治療薬が仮に効果を発揮したとしても、全員がその恩恵を受けられる可能性は低い。後遺症は「異なる種類の症状の集合」だからだ。
後遺症の症状はブレイン・フォグ、疲労、胸痛などさまざまだ。
そして患者ごとに、それぞれの症状の度合いが異なる。
また今回の研究では、後遺症患者で明確な補体の異常調節があったのはわずか3分の1から半数程度だった。
後遺症の原因に関する謎は、解明にはほど遠い。
これが1000ピースのパズルだとすれば、今は縁が完成した段階だ。
パズル全体が完成したわけではない。
コメント;
最近、新型コロナ罹患1か月以内に脳血栓を発症した20代の男性を経験しました。
動脈硬化が原因とは思えないので、なんらかの血管系の炎症が関与した可能性を考えています。
]]>
■ 2023年末:オミクロンJN.1株の出現 2023年末。その主役たるJN.1株の親株は、2023年の8月の終わりに突然見つかった、BA.2.86株。
ちなみに「JN.1」とは、「BA.2.86.1.1」が改名されたもので、BA.2.86株の子孫株。 JN.1株やBA.2.86株は、それまでの流行の主流だったXBB系統とはまったく異なる、BA.2株直系の子孫株。
その親株に相当するBA.2株に比べて、スパイクタンパク質に30以上もの変異を一気に獲得した。
2023年8月当時、BA.2.86株の出現については、世界各国でそれを報じていた。
しかし、感染症法5類に移行した後だったことも関係したのか、国内では、メディアからの報道がなかった。 BA.2.86株は、当初に懸念されていたほど流行拡大することはなかった。
しかし、 年末にスパイクタンパク質に「L455S」というひとつの変異をプラスする。
これによってJN.1株へと改名・進化すると、爆発的に流行拡大を始める。2023年11月から年末にかけて、フランスで流行が急拡大し、一気に主流の株へと躍り出た。
前年のXBB.1.5株のF486P変異とは違い、JN.1株のL455S変異は、ウイルスの「感染力」には大きな影響は与えないようだ。
一方、この変異によって、「免疫逃避力」がかなり向上している。
つまり、「L455S変異の獲得による『免疫逃避力』の向上」が、JN.1株の流行拡大へのキーのようである。
■「年の瀬の進化」から推測できること
この二つの流行にはいくつかの共通点が読み取れる。
その1
それぞれの親株(ベースとなる変異株。2022年のXBB株と、2023年のBA.2.86株)は、その時に主流だった株(2022年のBA.5株と、2023年のXBB系統株)とはかなり異なる配列を持っている。
その2
この「親株」に相当する変異株は、その年の晩夏に出現する。
その3
この「親株」そのものが、いきなり大流行することはない。
その4
この「親株」のスパイクタンパク質に、ひとつの「プラスアルファ」の変異、つまり、2022年のXBB株にとっての「F486P」、2023年のBA.2.86株にとっての「L455S」が入ることをきっかけに、流行が急拡大する。
その5
「プラスアルファ」の変異は、「感染力」の向上(XBB.1.5株にとってのF486P変異)、あるいは、「免疫逃避力」の向上(JN.1株にとってのL455S変異)に貢献する。 その6 この「プラスアルファ」の変異が獲得されるのが、ちょうど年の瀬にあたる。
引用
JN.1株出現から見えてきた、大流行する変異株の共通点は? https://wpb.shueisha.co.jp/news/technology/2024/01/13/121897/
https://www.meiji-seika-pharma.co.jp/hmpv/
気管支炎や肺炎などの呼吸器感染症をひきおこすウイルスの一種。
1〜3歳の幼児の間で流行することが多いが、大人にも感染する。
小児の呼吸器感染症の5〜10%、大人の呼吸器感染症の2〜4%は、ヒトメタニューモウイルスが原因だと考えられている。
症状;
ヒトメタニューモウイルス感染症は、いわゆる風邪症状に似ている。
・咳 (多くの場合、1週間程度続きます)
・熱 (多くの場合、4〜5日程度続きます)
・鼻水
悪化すると、以下のような症状が出ることもあります。
・ゼイゼイ(ヒューヒュー)という呼吸
(喘息様気管支炎、再気管支炎)
・呼吸困難など
特徴;
ヒトメタニューモウイルスに感染しても、1週間程度で症状は治まる。
しかし、1回の感染では免疫が獲得でない。
何度か繰り返して感染するが、年齢が上がるにつれて徐々に免疫がつき、症状が軽くなる傾向にある。
ヒトメタニューモウイルスは、ウイルスの遺伝子も感染症の症状もRSウイルスに似ており、症状も見た目だけでは診断できない。
感染の流行を防ぐためにはウイルスの鑑別を行うことも大切なで、医師から検査を勧められることがある。
ヒトメタニューモウイルスの迅速診断キットでは、鼻咽頭を細い綿棒でぬぐった後、5〜15分程度で鑑別できる。
治療;
・基本は対症療法
ヒトメタニューモウイルスだけに感染している場合、各症状を楽にするための対症療法を行う。
風邪と同じように、しっかり水分をとり、温かくして、ゆっくりと休む。
症状が辛いときは、咳や鼻水を抑えたり、熱を下げたりするためのおくすりが出ることがある。
細菌の同時感染にも注意;
ヒトメタニューモウイルスと同時に細菌にも感染してしまうことも少なくない。
熱が4日以上続く場合は、細菌にも感染している可能性があり、その場合は、抗菌薬が必要となる。
熱が長引く時は中耳炎や細菌による肺炎などをおこしていることがあるので、もう一度早めに受診しよう。
(コメント;白血球が増えている場合は細菌感染を合併している可能性があります)
]]>
9月以降に始まる予定の新型コロナウイルスのワクチン接種について、厚労省の専門家分科会は16日、国内外で主流になっているオミクロン株の亜系統「XBB.1」系統に対応したワクチンを使う方針を決めた。
5歳以上のすべての人を対象とする予定だが、最新の知見や海外の動向を踏まえ、秋までに最終的に決めるとした。
現在の接種は、65歳以上の高齢者や医療従事者らが対象。
オミクロン株の「BA.1」「BA.4とBA.5」対応のワクチンが使われている。
分科会は米国など海外の検討状況もふまえ、XBB.1系統に対応した開発中のワクチンを使うことで一致した。
主流となっているXBB.1系統に対して、感染を防ぐ「中和抗体」の増え方が、現在のワクチンより大きいという。
( 朝日新聞・朝刊 2023.6.17 )
<"COVID19" 2023.7 ?>
当院でも第9波の到来をも実感させる新型コロナウイルス陽性者の増加がみられる(2022.7.20時点)。
新規患者自体は、4月上旬以降緩やかな増加傾向で、検出される新型コロナウイルスの種類はオミクロン株のうちの「XBB系統」が大部分を占めているといわれている。
<"COVID19" 2023.7 ?>
厚労省の専門家分科会は、9月から5歳以上のすべての人を対象に始まる接種では、現在流行の主流となっているオミクロン株の派生型の「XBB.1」系統だけに対応する「1価ワクチン」を使う方針を決めた。
<"COVID19" 2023.7 ?>
6月時点で検出される新型コロナウイルスの種類は、オミクロン株のうちの「XBB系統」が大部分を占めている。
民間の検査会社で検出された結果をもとにした分析では、6月下旬時点にはインドなどで拡大し免疫を逃れやすい可能性が指摘されている「XBB.1.16」が49%になると推定されている。
]]>
・63年時点で153人だった日本の100歳以上人口は、54年後の2017年には6万7824人に増えた。
2050年には50万人以上になると予測されている。
・2016年、米国の研究チームが「人類の年齢の限界は115歳」という論文を科学雑誌「ネイチヤー」に発表した。
これまでの人間の最高齢記録を分析したところ、1960年ごろには110歳前後に、90年ごろには 115歳前後に伸びたが、それ以降は伸びが鈍化している。
・記録上、最も長生きしたのは1997年に122歳で亡くなったフランス人女性だが、この人は例外中の例外らしい。
日本でもこれまでに115歳を超えた人は10人もいない。
このあたりが生理的限界、という説には説得力がある。
・しかし、遺伝的に定められた人間の寿命はずっと短く、55歳程度ではないか、と考える学者もいる。
この年齢あたりから、癌で死ぬ人の数が急増するからだ。
癌は、細胞分裂時にDNAの複製エラーが生じることで発生する。
人体にはエラーを防ぐさまざまな仕組や、癌化した細胞を排除する免疫システムが備わっているが、年齢を重ねるにつれて複製エラ
ーの確率は高まり、免疫系は衰える。
結果、 癌を防ぎきれなくなる。
・人間が他の動物と比べて長生きするようになった理由として「おばあちゃん仮説」という理論がある。
人間の子育てには大変な手間がかかる。
子供が産めなくなった後も長生きして今度は孫の世話をすれば、より多くの子孫を残すことができ、人類全体にとっても有利。
だからヒトは長生きに進化した、という仮説だ。
とはいえ、それで伸びた寿命も55歳ぐらいまでで、ひいおばあちゃんになるまで長生きしても、それほど子育てに役立つとは思えない。
(コメント:言ってみれば男性は「無用の長物」という仮説です)
・55歳以降の人生は、公衆衛生や栄養状態の劇的改善、医学の発展という「文明がもたらした生」と言える。
人によっては50年にも及ぶ、この「新たな生」をどう生きるか。
人類史上未曽有のことなので、容易に答えは出ない。
・従来の社会で高齢者に求められたのは経験に基づく「見識」だった。
年と共に脳の細胞数は減少するが、これは決してマイナス要因ではなく、余分な細胞が整理されて脳の回路が洗練され、短時間で的確な判断を下せることを意味する。
・これからは見識だけではなく、実質的な「貢献」も求められる。
少子高齢化が進めば、世代の新陳代謝の速度が鈍り、「種としての人類」の脆弱化につながりかねない。
孫だけではなく、幅広い次世代育成のために高齢者に何ができるか。
真剣に考える時が来ている。
引用
The Asahi Shinbun GLOBE 2018.1No.201
(東京大学分子細胞生物学研究所・林武彦教授)
]]>大阪市の薬剤師、Mさん(41)は言う。
店内にある、薬を保管する棚には、空になったケースもあった。
・重い病気と闘う患者や高齢者は、何種類もの薬を継続して服用していることが少なくない。
命に関わる薬もある。
それなのに、ここ2年半ほど、思うように薬を渡せない。
薬が足りず、譲ってもらえないか近くの薬局を聞いて回った末に隣県まで取りに行ったこともある。
薬剤師を15年続けるが、初めてのことだ。
・3年前に調剤薬局を開いた。
処方箋の調剤だけでなく、自宅に薬を届ける在宅訪問も請け負っている。
次の訪問日までに薬を用意できるか、「ずっと綱渡りの状況が続いている」。
・過去に注文実績のない薬は、ほとんど納入してもらえない。
入荷時期を問い合わせても「わからない」と言われるだけだ。
・末期がんの患者さんに、数週間ごとに痛み止めとして「カロナール」を届けている。
新型コロナの流行で解熱剤として需要が急増し、供給が不安定になった。
同じ成分の解熱鎮痛剤の薬は他にあるが、人によっては効き目が異なる場合もあり、同じ薬を飲み続ける場合が多い。
「末期がんの患者さんに今週は痛み止めの薬を手に入れることができませんでした、と言えますか」。
Mさんは問う。
きっかけはメーカーの不祥事だった。
(朝日新聞・朝 2023.3.28)
・約24時間周期でリズムを刻む体内時計への影響について、マウスの実験で明らかにした研究がある。
規則正しく食事を与えていたマウスに、朝食を抜いて食事の開始時刻を8時間後ろにずらすと、肝臓の体内時計が4時間ほど遅れたことが確認された。
別のマウスの実験では、目覚めた後の最初の食事で炭水化物の一部である糖と、たんぱく質をつくるアミノ酸の両方を注射すると体内時計がリセットされたが、糖のみ、アミノ酸のみの注射ではできなかった。
・体に1日の始まりを認識させるには、ご飯やパンなどの炭水化物と、肉や魚などのたんぱく質の両方を含む朝食が効果的なことが裏付けられた。
・また、コーヒーなどに含まれるカフェインを摂取すると、活動時間が延びて体内時計の周期が約24時間よりも長くなった。
カフェインの濃度によって差がつき、覚醒効果も改めて示された。
就寝時刻が遅くならないように、コーヒーは夕方よりも前に飲むとよいことになる。
朝は定時に炭水化物とたんぱく質を
・塩分多めの食事は、内臓や組織の末梢体内時計を約3時間早めることもわかってきている。
リズムを整えるには朝食での塩分摂取が大切で、とくに夜型から朝型に切り替えたい人はこれを意識するとよい。
ただ、塩分のとりすぎは高血圧を招くリスクがあるので摂取量には気をつける必要がある。
・また、健康な成人は、1日の最初の食事(朝食)と最後の食事(夕食)までの間隔を12時間以内におさえて、夕食から翌日の朝食までの時間を延ばすのも、体内時計を保つポイントになる。
年齢を重ねると、長時間の絶食はたんぱく質不足になりかねない。
筋力の低下が気になる高齢者は、空腹の時間を短めにしたい。
・高齢者は筋力の維持も重要。
夕食にとるたんぱく質の量を、朝食に振り替えていくと筋肉量が増えやすい。
1日の食事のボリュームも併せて見直し、朝・昼・晩で差をつけず、同等に近づけることを心がけたい。
(朝日新聞・朝刊 2023.5.27)
]]>https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20230413b.html
(NHK 首都圏ナビ 2023.4.13)
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」に移行したあとの感染者数の把握や公表などについて、厚生労働省は、指定医療機関が週1回報告する「定点把握」に変更する方針を含む監視体制を示した。
これまでの「全数把握」と「定点把握」では何が変わるのか。
新型コロナ流行状況は「定点把握」に
・「流行状況の把握」については5月8日から週1回、全国約5千の医療機関に年齢層や性別ごとの新規感染者数を報告してもらう「定点把握」に変更される。
現在(今までは)は、患者の情報を一元管理する「HER−SYS」と呼ばれるシステムを通じて、医療機関や自治体から報告を受ける「全数把握」が行われていて、自治体が新規感染者の総数や年齢層、性別を1日ごとに公表している(いた)。
・「定点把握」に切り替われば(り)、自治体による日々の集計や発表は打ち切られ、1週間ごとの集計結果を国立感染症研究所が毎週、ホームページ上で公表するかたちとなる(なった)。
・厚生労働省は、「定点把握」を補完する目的で、献血の血液を分析して抗体の保有率を調べる調査や、下水に含まれるウイルスを検出して流行の動向をつかむ研究を継続する。
入院・重症者は一定継続
・医療ひっ迫の目安となる「入院患者」や「重症者」の人数の把握も「定点把握」に変更する方針が示される(た)。
・具体的にはおよそ500か所の医療機関からの週1回の報告を国立感染症研究所が集計する。(コメント;全国でわずか500か所?)
・当面の間は、全国の医療機関が「入院患者」や「重症者」を報告しているいまの方法を一定期間継続し、医療ひっ迫の状況や重症度の変化を把握する。
病原体の動向把握 目標値減らし継続
・新たな変異株の発生などを把握するためのゲノム解析=ウイルスの遺伝子の解析は、目標数を4分の1程度に減らして継続する。
・これまでゲノム解析は、都道府県で実施率5〜10%程度、数として週300〜400件を目安に実施しているほか、国立感染症研究所でも週に800件の解析をしてきた。
・5類に移行したあとは、都道府県で週100件、国立感染症研究所で週200件程度とする方針で、結果は、国立感染症研究所のホームページで週報や定期報として公表する。
死者数は2か月後に把握
・新型コロナに感染して亡くなった人については、医療機関が自治体に報告し、国が集計して毎日、公表しているほか、国の統計「人口動態統計」により、例年の水準と比べて死者数が増えていないかどうか推移を把握してきた。
・今後は都道府県などによる毎日の報告と公表は終了し、「人口動態統計」をもとに死者の総数を2か月後に詳細な死因別は5か月後をめどに推移を把握する方針だ。
・ただ、集計に時間がかかることからこれとは別に、協力を得られた一部の自治体の死亡した人の総数を、1か月以内をめどに集計し、増減の傾向などを把握する。
病床使用率・クラスター・検査数
「病床使用率」は医療ひっ迫の指標として把握されてきた。
厚生労働省はこれまで各都道府県が新型コロナの患者のために確保した病床の使用率などを週に1度まとめて公表している。
・5類に移行したあと、自治体や医療機関で確保病床の数の見直しが進められるが、「病床使用率」の把握は継続することにしている。
・医療機関や高齢者施設、学校などでの複数人の感染事例、「クラスター」については、病院や福祉施設には保健所への報告を求めますが、国による一律の公表は行われなくなる。
「検査数」については現在行われている医療機関からの報告を継続。
「急性呼吸器感染症」感染動向の把握方法は
・将来的なパンデミックに備え、「急性呼吸器感染症」の感染動向などを一体的に把握する方法について検討を進める。
「急性呼吸器感染症」にはインフルエンザや新型コロナウイルス、RSウイルス感染症などが含まれ、厚生労働省は今後、定点医療機関の負担を考慮しながら専門家による部会で本格的な検討を進めていくことにしている。
]]>https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC20A6E0Q3A420C2000000/
・免疫の異常な働きが原因で皮膚などに炎症が起きる乾癬は欧米人に多い疾患とされ、世界に1億人の患者がいるといわれる。
塗り薬から最先端のバイオ医薬品まで様々な治療薬があるが、近年はより使いやすく治療効果の高い新薬が次々と登場するなど治療現場が大きく進化してきた。
・乾癬は主に尋常性乾癬、関節症性乾癬、乾癬性紅皮症、滴状乾癬、膿疱性乾癬の5つの種類がある。
9割が尋常性乾癬といわれ、原因は解明されていないが、遺伝的要素やストレス、肥満、内服薬などが関係しているとされる。
アトピー性皮膚炎と似ているように見えるが、症状は異なる。
・治療は基本的に塗り薬が中心で、軽症の場合は活性型ビタミンD3、ステロイドを配合したゲル、軟膏、泡(フォーム)などが使われる。
紫外線の波長を発光ダイオード(LED)などで照射する光線治療もあり、こうした治療で症状が改善する人もいる。
問題は中等症から重症の患者に対する治療だ。
・全身の90%以上が皮疹で覆われ、皮膚に膿がたまり発熱などの全身症状を伴う重症型もある。
見た目に分かる症状のため、周囲の誤解・偏見が生じることもある。
そんな状況を大きく変えたのは抗体医薬だ。
がん治療などで使われるバイオ技術を活用した医薬品で、日本では2010年から乾癬の治療に使える抗体医薬が相次いで承認され、重症患者の治療に大きな効果が出ている。
・もっとも抗体医薬は高額なうえ、重篤な副作用が起きることもあり、使用できる施設・医師にも条件がつく。
また注射や点滴での治療を嫌がる人も多い。
・そうした人たちにとって待望の飲み薬が登場した。
22年9月に日米で承認された米ブリストルマイヤーズスクイブ(BMS)の「ソーティクツ錠(デュークラバシチニブ)」だ。
1日1回服用するだけで、中等度から重度の乾癬治療に効果があるといい、患者からの期待が大きい。
・使用した患者からは、「体がすごく楽になった」(50代男性)、「症状が抑えられ、仕事に集中できるようになった」(60代男性)という声が相次いでいる。
・乾癬は症状も様々で、生活の質(QOL)に深刻な影響を与える。
その上で「ソーティクツ錠は患者にとって新しい選択肢となる。
・ソーティクツ錠は炎症を悪化させる「TYK2」という分子を阻害する。
従来の治療薬とは異なるアプローチで開発された「ファースト・イン・クラス」(その仕組みで最初に登場した画期的医薬品)といわれる新薬だ。
体内で免疫が過剰に働くときの情報伝達を邪魔することで、炎症を抑えることができるという。
・乾癬の炎症反応の仕組みが徐々に分かってきたことにより開発が可能になった最先端の研究成果といわれている。
・日本人を含む国際共同臨床試験(治験)では、多くの患者で症状が改善されたという結果が出た。
乾癬の面積と重症度を評価する指数「PASI」でみると、当初に比べPASIが75%以上改善した患者の割合は全体の58.4%だった。
日本人では特に高い効果がみられた。
一方、偽薬(プラセボ)を使った患者群で75%以上改善したのは12.7%。
ソーティクツ錠を使用した患者のなかには、病変が完全に消えた人やごく軽度にまで改善した人も半数近くいた。
有効性を示すPASIの数値は、国内で初期に登場した抗体医薬とほぼ同等の治療効果があるという。
・副作用も少なく、治療効果も高い。
まさに画期的な治療薬といえる。
今後はバイオ医薬品の有効性に迫るような内服薬剤の開発が加速する。
ソーティクツ錠はその兆候と言えるかもしれない。
・ただ、副作用が少ないとはいえ、感染症にかかっている人には注意が必要だ。
免疫の働きを抑えるため、重篤な感染症患者は症状を悪化させるリスクがあり使用できない。
事前に結核や帯状疱疹、B型肝炎などの検査、胸部のレントゲン検査などが必要となる。
・現時点では抗体医薬と同じく使用できる施設・医師にも条件があり、クリニックなどですぐに処方できない。
今後、多くの人が使用し、安全性の情報などが蓄積されれば、こうした条件が緩和される可能性もある。
・乾癬の新薬開発は活発だ。
国内で使用できる抗体医薬では昨年承認された「ビンゼレックス」など10種類以上ある。世界では新たな抗体医薬の治験も進む。
TYK2を阻害する薬剤でも米国のスタートアップを中心にした開発が進んでいる。
乾癬治療の技術革新に期待が集まる。
日常生活に影響、悩み深く
・乾癬はウイルスや細菌のように他人に感染するわけではないが、頭皮や爪など人目につく場所に症状が出やすいため、患者の生活に大きな影響を与える深刻な病気だ。
人によっては日常生活が制限されることもあり、患者が抱える悩みは大きい。
ある製薬メーカーが22年12月に実施した調査では、患者の8〜9割が「温泉やプール、半袖を着て出かける」ことを避けた経験があると回答した。
理由については「症状をみられたくない」「不潔だと誤解されたくない」と答えた。
治療の選択肢が少なかった昔と違い、今は新しい治療法がどんどん増えている。
早期に医師に相談し早めに治療を始めることが大切となる。
(日経新聞 2023.4.30)
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https://medical-tribune.co.jp/news/2018/0802515299/
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・わが国で抗認知症薬を処方する前に甲状腺機能検査がどの程度行われているかを調べた調査で、約3割にしか実施されていないことがわかった。
・「認知症疾患診療ガイドライン」では甲状腺機能検査の実施が推奨されていることから、この実施率の低さは問題である。
・甲状腺機能低下症は、加齢に伴う身体機能の変化と区別が難しく、診断されにくい傾向にある。
しかし、早期に治療すれば認知機能障害の回復も期待できるため、典型的な所見が認められない場合でも、認知症の診断時には甲状腺機能検査を実施すべきある。
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